〔昭和45年 中学3年の頃〕 うちの子供に聞いてみたら 最近の学校では フォークダンスを教えていないらしい。 少し淋しい。 僕等の中学校時代 体育祭には必ず フォークダンスが行われていた。 女子生徒はそうでもなかったが 僕等 男子生徒は 「何で 女なんかと 踊らなかんのや。」 などと 言って 硬派ぶっていた。 僕もその一人だった。 しかし 本当は・・・・ 楽しみに していた ひとりだったのです。 密かに 憧れていた女の子の 手を握れる チャンスは 年に一度の体育祭の時だけしかなかった。 一年生の時 オクラホマ・ミクサーというフォーンダンスをして 好きだったA子さんの手を握った。 想像していたように その子の手は 温かかった。 さて とんでもない事が起きたのは 三年生の時のフォークダンスの練習の時だった。 踊る曲目は やはりオクラホマ・ミクサーだった。 踊る相手の女の子が次々替わり お目当ての好きだった Y子さんと踊っていた時の事。 突然 音楽が止まってしまったのだ。 それも 踊って手をつないでいる最中に・・・。 1分、2分、3分・・・ 音楽は回復しない。 その間 ぼくは音楽の止まった踊りの体勢で Y子さんの手をずっと 握りしめていた。 しばらく すると 背中の方から クス、クス、クス、・・・ という 忍び笑いが 聞こえてきた。 なぜだろう と まわりを見回すと ほかの踊るペアは とっくに 踊りなどやめて もちろん 手など離して 音楽が流れてくるのを 待っていたのだ。 僕とY子さんのペアだけ まるでダンスをしている お人形さんのように そのまま 固まっていた。 フォークダンスの輪の中で 僕等の後ろにいた みんなは 内緒にして 笑って見ていたらしい。 みんなの視線に 気づいて 僕は すぐ 握っていた手を離した。 「わーっ、恥ずかしーい。」 と 思った。 けれど しあわせだったな。 あの ひととき。 Y子さんは みんなに 冷やかされても 笑っていた。 同年代の妻もフォークダンスが好きだったらしい。 あと三人。 あと二人。 憧れていた男子生徒と踊れる ことを楽しみにして 待っていると あとひとりの ところで ジャーン。 「フォーダンスの曲って、 すぐ 終わってしまうのよね。」 と 口惜しそうに 話していたことがある。 |
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